手付金支払い後のキャンセル

仮の申し込みをして、手付金を払った後でもキャンセルはできるのですか?また、その場合キャンセル料はかかるのですか?

まず最初に、賃貸契約の前に、支払うお金については、契約を実行したかどうかによって、払った金額の意味合いが異なってくることを説明しておきます。その種類は下記の2つです。

預かり金(または申込金)

契約前に、その部屋を確保しておくために支払うお金。

手付金

契約を交わした後、代金の全部あるいは一部を先に渡すお金。つまり契約をしていれば「手付金」、していなければ「預かり金」ということになります。

預り金については基本的には返還されるべきものですが、「手付金」は一度契約をした後のキャンセルということになりますから、キャンセル時には放棄する(帰ってこない)前提となります。こう説明すると非常にわかりやすいようですが、実情はそうではありません。それは契約書を交わすことを契約とするかどうかが解釈の分かれる状態にあるからです。

日本の法律には諾成契約という概念があり、契約書を交わしてなくとも、契約の意思を見せると契約したと同意、とされています。ここで難しいのは、どの段階が「意思」なのかが不明瞭にあることです。あなたが軽い気持ちで「預かり金」と思って払ったお金も、もし「意思」に見えた場合は「手付金」と解釈されてしまう…。しかも一般では「手付金と「預かり金」の区別も曖昧なので、不動産会社は「返せない」と言い、利用者は「返して欲しい」と…。したがってこの問題は各地でトラブルになっています。こういう危険を防ぐには、事前に金額を求められる場合に、預り証を出していただく、返却できる旨を確かめておく、などの対処まで行えば安心です。

別の観点をもう1点。返すか返さないのトラブルの原因として、入居者側のモラルの問題も。あちこちの不動産会社で物件を見て、「とりあえず仮押さえをしとこう」と、あちこちに手付金を入れる利用者に困ることもあって、不動産会社では預かり金・手付金の区別なく「返しません」とまず説明しているケースもあるようです。ご相談の方の場合、すでに申し込みをされたということが確実であれば、おそらく「手付金」になると思われます。その場合は、金額は帰って来ないことになりますが、契約した意思がない、という場合は相談してみても良いでしょう。